カルティエ腕時計の多くは、時間と一緒に日にちや曜日を確認できる「カレンダー機能」が搭載されています。
カレンダーはとても便利なものである一方、実は腕時計の中でも特に故障しやすい部分の一つです。普段ビジネスシーンなどで何気なく使っている時はそのありがたみを忘れがちですが、いざ故障してしまうと、日にちがすぐに確認できないというのは意外と不便です。できることならカレンダーの故障は避けたいところでしょう。
ここではカルティエ時計のカレンダー機能が故障する原因とその対策についてご説明します。
※時計画像出典:カルティエ公式サイト
腕時計のカレンダー機能の種類
カルティエをはじめとする腕時計にはメーカーごとに多種多様なモデルがあり、カレンダー機能にも複数の種類があります。もちろん「日にちを表示できる」というのは共通していますが、その他の表示に少しずつ違いがあるのです。
モデル | 特徴 |
---|---|
デイト | 日付のみを表示する、腕時計のカレンダーとして最も普及しているタイプです。 大の月・小の月の違いには対応できないため、小の月の翌月1日に日付を手動で調整する必要があります。 |
デイデイト | 日付と曜日を表示するタイプです。 大の月・小の月の違いには対応できないため、小の月の翌月1日に手動調整が必要です。 |
トリプルカレンダー | 月・日付・曜日を表示するタイプです。 大の月・小の月の違いには対応できないため、小の月の翌月1日に手動調整が必要です。 |
アニュアルカレンダー(年次カレンダー) | 1年間の大の月・小の月の違いに対応して正しい日付を表示できるタイプです。 2月のみ日数が例外となるため、1年に1回(3月1日)手動調整が必要です。 |
パーペチュアルカレンダー(永久カレンダー) | 西暦・月・日付・曜日を表示し、大の月・小の月・うるう年の違いに対応して正しい日付を表示できるタイプです。 ここでご紹介した5タイプの中で最も複雑な機構を持ちます。 |
カレンダー表示の仕方は、文字盤に設けられた小窓から表示するものが多いですが、中には文字盤に書かれた1~31の数字を針で示して日付表示する「ポインターデイト」や、日付の各位を別々の窓に大きく表示する「ビッグデイト」いう形式もあります。
腕時計のカレンダー機能の仕組み
カルティエ時計のカレンダー機能は様々な部品の組み合わせによって実現しています。ここでは最もシンプルな機構を持つデイト表示(日付のみを表示するもの)についてご説明します。
画像出典:MEN’S EX ONLINE「腕時計のカレンダーのしくみはどうなっているの?【デイト表示の秘密】」
上図は、デイト機構の仕組みを示したものです。
中央にある「筒車」は時針が取り付いている歯車で、12時間で1回転します。この回転が「中間車」を経て「日送り車」に伝わります。
日送り車は24時間で1回転するようになっており、ドーナツ型の「日車(カレンダーディスク)」を24時間に1回押し回します。
日車の表面には1~31の日付が印刷されており、日車が動くと、文字盤の窓から見える日付が1日進む、という仕組みです。
また日車は、リューズと連動している「早送り車」の回転によっても動かすことができ、これによって手動で日付を調整できるようになっています。
しかし上図のように日送り車の突起が日車のツメ(日送りツメ)にかかった状態で、リューズを回して日車を動かそうとすると、お互いの動きが干渉してしまい、破損や故障の原因となるのです。
なお、上にご説明したデイト表示以外のタイプはより複雑な機構で成り立っており、それだけ故障の可能性も高いといえます。
カレンダー機能が故障する原因
私たち時計修理工房のもとにも、カルティエ時計のカレンダー修理のご依頼を数多く頂いております。
これまでの修理実績をもとに、カレンダー機能が故障してしまう主な原因についてご説明いたします。
歯車・パーツの変形や破損
前の章でご説明した通り、カルティエのカレンダー機能はカレンダーディスク、日送り車、早送り車など多数の歯車やパーツがかみ合い連動することで成立しています。これらの歯車が一つでも破損して動かなくなってしまうとカレンダーは正常に動作しません。
歯車はいずれも小さく繊細なものですから、何らかの原因で無理な力がかかったりして変形や破損が生じることがあります。外部からの強い衝撃も破損の原因です。扱いには十分注意しましょう。
操作禁止時間帯の操作
上述の「歯車の破損」に関連して、カレンダーの扱いで特に気をつけたいのが、カレンダーの「操作禁止時間帯」です。
日付が変更する時刻(夜中0時前後)が近付くと、日送り車に付いた突起が日車のツメに接し、そこから徐々に日車を押し回していきます。この状態でリューズを回して無理やり日車を動かそうとすると、日車と日送り車が接する部分に無理な力がかかり、変形や破損が起きてしまう恐れがあるのです。
これを防ぐために、機械式時計にはカレンダーの「操作禁止時間帯」が設定されています。日車のツメと日送り車の突起が接近している、あるいは触れ合っている時間帯は、リューズで日車を操作してはならないとしているものです。
日車の回転は24時間で1回転と非常にゆっくりなので、日付変更の前後4時間、つまり「20時~翌日4時」を禁止時間としているのが一般的です。これをつい忘れて禁止時間帯にリューズ操作をしてしまうと、故障の原因になります。
なお、こうした禁止時間帯のない時計モデルもありますので詳しくはメーカー等にお問い合わせください。
部品の油切れ
カルティエのカレンダー機能を構成する歯車やパーツは毎日毎時動き続けています。ゼンマイや電池が切れない限り、基本的に動きを止めることはありません。そのため、たとえ目に見える部品の破損はなくても、長い間カルティエ時計を使用している間に歯車や軸がお互いの摩擦によって摩耗し、少しずつ劣化しているのです。
こうした部品の摩耗や劣化を防ぎ、スムーズな動きを維持するために機械式時計の内部には各所に油を使用していますが、この油も年数とともに劣化し油切れを起こします。油が劣化すると部品の動きが悪くなりカレンダーの切り替わりに影響する上、部品の劣化や破損を招きます「目立った外傷もないし丁寧に使い続けてきたのに、カレンダーが故障した」という方は、油切れによる劣化が原因かもしれません。
リューズの不具合
「カレンダーの自動変更は正常に行われるが、手動での日付変更ができない」といった故障の場合は、リューズの不具合が考えられます。
腕時計のカレンダー表示を切り替える動きに2系統あるのはたびたび申してきた通りで、自動で切り替わるのは日送り車、手動で切り替わるのは早送り車の動きによるものです。通常、早送り車はリューズの動きに連動しますが、もしリューズの割れ・欠けや破損、リューズに付いている巻き芯の折れなどの不具合があって、早送り車に動きが伝わっていない場合は当然カレンダーも動きません。
カレンダー機能が故障したらどうする?
カレンダー機能の故障の原因についてはご理解いただいたかと思いますが、ではもし自分のカルティエのカレンダーが故障してしまった場合、どうすれば良いのかについてご説明いたします。
様子を見る
最初にカレンダー表示に異常が見られた時は、故障を疑う前に、まずは時刻の再調整を行った上で様子を見てみましょう。
特にデイト機能は、そもそも小の月の変わり目に手動で日付調整を行うのを前提としていますので、手動調整を繰り返しているうちに切り替わりのタイミングがずれていくことがあります。また一時的に内部部品の引っかかりなどで動作がおかしくなっているのかもしれません。
時計修理店に見てもらう
「時刻の再調整をしてみたが状況が変わらない」「カレンダーが全く動かない」など、様子を見ても解決しそうにない場合は、その他の原因(歯車やパーツの劣化・破損、油切れなど)によってカレンダーが故障していると考えられます。
こうなると時計内部を確認しないと原因の特定や解決はできません。なるべく早く時計修理店に持ち込み、修理対応してもらいましょう。
この場合、カレンダーディスクや歯車などが破損していて部品交換によって問題を解決できるケースと、油切れなどが原因で機械全体の分解洗浄(オーバーホール)が必要となるケースがあります。またカレンダーの機構だけでなく、リューズなど関連する他の部分が故障している可能性もあります。
いずれにしても専門の技術者でないと修理対応は難しいため、信頼できる時計修理店に依頼する必要があります。
メーカーに依頼する
手頃な時計修理店が見つからない場合は、時計メーカーにカレンダー修理を依頼することもできます。
カルティエをはじめ各時計メーカーでは時計修理を受け付けるカスタマーサービスを設けており、正規代理店やWebサイトなどで修理依頼が可能です。
なおメーカー修理の場合は、カレンダー機能「のみ」を修理するというのはまれで、オーバーホール、部品交換、機能点検など全体的な修理・メンテナンスを行います。そのため一般の時計修理店よりも料金は高額で、納期もかかるという点はご了承ください。
カルティエのカレンダー機能の修理は時計修理工房へ
ここまでカルティエ時計のカレンダーの仕組みや故障の原因についてご説明してきました。カレンダー機能は、先人の知恵と技術によって生み出された、機械式時計の緻密で精巧なメカニズムの一つです。ぜひ大切に使っていただきたいと思います。
カレンダーの故障修理は基本的に時計修理店かメーカーへの依頼となりますが、時計修理店といっても実店舗・ネット店舗とも全国に多数ありますので、どの店が良いのか、選び方が分からないという方も多いと思います。
もしお手元のカルティエのカレンダーに「動かない」「リューズで送れない」「切り替わりが遅い・早い」などの不具合が見られましたら、ぜひ私たち時計修理工房にご連絡くださいませ。
時計修理工房では、カルティエをはじめとする高級舶来時計の様々な故障や不具合を修理してまいりました。おかげさまで当店での時計修理本数は年間約12000本と圧倒的な実績を誇っております。東京と大阪に3店舗を構え、腕利きの時計職人たちが高品質の時計修理を安価でご提供。ご来店が難しい方には、ご自宅からでも郵送で修理に出せる「無料見積配送パック」もご用意しております。
時計修理のことならどんなお困り・お悩みも時計修理工房にお任せください。
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カルティエ修理・オーバーホール
また、過去のカルティエ事例を多数掲載しておりますのであわせてご参照くださいませ。
時計修理事例(カルティエ)