熟練の技術をもって精巧に作られたIWC腕時計でも、故障と全く無縁ということはありません。
特に、時計の時刻・日付合わせやゼンマイ巻き上げに使われる「リューズ」は、時計の中でも故障しやすい部分の一つ。私たち時計修理工房にも「IWCのリューズが閉まらなくなった…」「リューズが動かなくなった」といったご相談が日々寄せられています。
ここでは、私たち時計修理工房の職人が、豊富なIWCの修理経験をもとに、IWCのリューズが閉まらなくなってしまう主な原因や、実際にこうしたトラブルに遭遇した時にどのような対処方法があるのかを詳しくご説明します。
腕時計の「リューズ」とは
リューズは、腕時計の時刻・日付の調整や、機械式時計のゼンマイの巻き上げに使われるパーツです。指で扱いやすいよう時計本体から飛び出しているので、見ればすぐにそれだと分かると思います。
通常は時計の右側に付いていますが、まれに左側に付いているモデルもあります。
リューズには大きく分けて「引き出し式」と「ねじ込み式」の2タイプがあります。
「引き出し式」は、リューズの出し入れを、指で引っ張ったり押し込んだりして行うタイプです。大部分の腕時計ではこの引き出し式が採用されています。
「ねじ込み式」は、リューズの出し入れを、ネジの開け閉めによって行うタイプです。引き出し式よりも気密性・防水性が高いため、ダイバーズウォッチなどに用いられます。
ちなみに「リューズ」は漢字で書くと「竜頭」となります。私たちには耳慣れている言葉ですが、リューズというのは日本での呼び方で、海外ではその形状から、王冠を示す「クラウン」や「クローネ」と呼ばれるのが一般的です。
リューズの操作方法
一般的なリューズの操作方法をご説明します。時計の仕様によってはこの方法と異なる場合がありますのでご了承ください。
引き出し式リューズの場合
①ゼンマイを巻き上げる
通常の状態(リューズが時計ケースに押し込まれた状態)で時計回りに回すと、ゼンマイを巻き上げることができます。
②日付を調整する
リューズを軽く引っ張り、一段階引き出します。その状態で回すと日付や曜日の調整が行えます。
③時刻を調整する
②の状態から、さらにリューズを引くともう一段階引き出せます。これを回すと時刻の調整が行えます。
④リューズを収める
日付や時刻の調整が終わったら、リューズを時計ケース側に押し込みます。引き出した状態のままにしておくと故障の原因となるため必ず収めてください。
ねじ込み式リューズの場合
①リューズを開放する
反時計周りにリューズを回すと、リューズが少し飛び出して回す感覚が軽くなります。これがリューズが開放された状態です。
②ゼンマイを巻き上げる
①の状態でリューズを前後に回すと、ゼンマイを巻き上げることができます。
③日付を調整する
①の状態でリューズを軽く引っ張り、一段階引き出します。その状態で回すと日付や曜日の調整が行えます。
④時刻を調整する
③の状態から、さらにリューズを引くともう一段階引き出せます。これを回すと時刻の調整が行えます。
⑤リューズを閉める
リューズを押し込みながら時計回りに回すと、リューズがねじ込まれてケースに収まります。緩みがないように閉めてください。
IWCのリューズの特徴
IWCの腕時計にも、もちろんリューズが付いています。IWC腕時計の中でもリューズが特徴的なモデルといえば「ビッグ・パイロット・ウォッチ」です。一目見て分かる円錐型の大きなリューズは、ただ目を引くだけでなく、パイロットが飛行中に手袋を着けたままでも操作しやすいという操作性の良さも備えています。
IWCのリューズが閉まらなくなる原因
リューズは、使わない時は閉めておく(時計ケースに収めておく)のが鉄則です。
リューズを引き出したままの状態にしておくと、ケースとの隙間から時計内部に水分やホコリが侵入する可能性があります。それらの異物が、精密な時計の内部機構を傷めることになれば致命的な故障につながりかねません。
ところが、「引き出したリューズが根元まで閉まらなくなった」「元の位置に戻せない」「リューズが固くて動かない」といった故障事例も、実は大変多いのです。リューズが閉まらなければ、大きな故障を連鎖的に引き起こしてしまう恐れがあります。早急に対策を考えましょう。
IWC時計のリューズが閉まらなくなるのには、次のような原因が考えられます。
リューズ内側のねじ込みの摩耗
リューズをほどいたり、ねじ込んだりする動作を繰り返し行っていると、内側のねじ山と中のチューブが摩耗していき、ねじ込みができない状態になることがあります。
この動作は時計の時間合わせで行うものですから、時計を使い続ける以上は避けられません。正しくお使いになっていても、この劣化を完全に防ぐことは難しいでしょう。
隙間のホコリやゴミ
リューズと時計ケースとの隙間やねじ山の部分に、ホコリやゴミなどの異物がたまってしまったために閉まらない、動かない、ということがあります。リューズは指で触れることが非常に多く、皮脂や汚れが自然に付着しやすい部分だからです。
ブラシやつまようじなどの細い器具で、隙間から詰まった汚れをかき出せれば動くようになりますが、下手をすると詰まりが取れないどころか、別の部品を損傷してしまう恐れもあります。腕に自信がなければご自身では触らないのが無難です。
錆び
汚れやホコリがなくてもリューズが閉まらない場合は、リューズやケースのねじ山部分に錆びが発生している可能性もあります。時計のパーツは金属製ですから、わずかでも水分が内部に侵入し、そのまま放置していると長い期間のうちに錆びてしまいます。
ホコリなどと違い、錆や腐食は軽くこすったぐらいで簡単に取れるものではありません。時計を分解し、部品の点検や交換などを行う必要があります。
リューズの破損
リューズに限らず、時計を構成する種々の部品はどれも非常に繊細なものですから、無理な力がかかると変形したり破損したりしてしまいます。気を付けているつもりでも、日常的に使っているうちについ強く力をかけすぎたり、無理な動かし方をしたりしてしまうことはあるでしょう。
リューズが動かない、閉まらないという症状がある場合は、もしかしたらリューズそのものやチューブ、リューズと機械をつないでいる巻き芯が変形・破損してしまっているかもしれません。
ねじがまっすぐ入っていない
これはねじ込み式のリューズについての問題ですが、リューズをねじ込む時は、ねじの軸に対してまっすぐ押し込み、ねじ山がきちんとかみ合った状態で閉める必要があります。
ねじが軸に対してまっすぐ入っていないと、ねじ山がかみ合わず、途中で閉まらなくなってしまいます。ここで無理やりねじ込もうとすると、最悪の場合ねじ山がつぶれてしまうのでご注意ください。
リューズをねじ込む時に少しでも引っ掛かりを感じたら、それ以上無理に押し込もうとせず、ねじを緩める方向に回して再度ゆっくりねじ込んでみてください。
IWCのリューズが閉まらなくなった時の対応は?
前章で、IWCのリューズが閉まらなくなる原因についてご説明しました。
では、もし実際にお持ちのIWCのリューズが閉まらない、動かないということになったら、どうすれば良いのでしょうか?
リューズが閉まらない原因が、前章で最初にあげた「ホコリやゴミの詰まり」であれば、うまく詰まっているゴミを取り出せれば元通りに閉まるようになります。
ですので、リューズが閉まらないと分かったら、まずリューズ周りを掃除してみるのは一つの方法でしょう。時計は非常にデリケートなものですから、他の部品を傷めないよう慎重に行ってください。
それでも問題が解決しなければ、時計内部で部品の錆びや変形が起こっている可能性があります。これは普通の人に修復できるものではないので、無理せずに専門の業者に時計修理を依頼しましょう。
異常を確認してからも、修理に出さずだましだまし使い続けていると、リューズ以外の部分も故障や不具合を起こす危険があります。できる限り早めに対処してください。
最も危険なのは、素人判断で「きっとこうだろう」「何とかなるだろう」と、無理に動かしたり時計を分解したりすることです。その結果、不具合が解消できないばかりか、部品をなくしたり破損したりして元の状態にも戻せず、時計修理店で高額な修理をするはめになりかねません。
IWCのリューズが閉まらない時の修理なら「時計修理工房」にお任せください!
もしお手元のIWCに、リューズが閉まらない・動かないなどの不具合が見られましたら、ぜひ私たち時計修理工房にご連絡くださいませ。
時計修理工房では、リューズの故障やトラブルだけでなく、IWC時計のさまざまな故障や不具合を修理してまいりました。おかげさまで全国各地から修理のご依頼を頂き、年間修理本数は約10000本と他店を圧倒しております。
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